The NNA Asia: 半導体素材から生態系構築 - ベトナムウエハーの挑戦(上)
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- 9月30日
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更新日:10月1日
半導体素材から生態系構築
ベトナムウエハーの挑戦(上)
ベトナム南部ホーチミン市に拠点を置く地場新興企業ベトナムウエハーが、半導体産業の基盤づくりに挑 んでいる。国内に豊富に存在する石英資源の高純度化に取り組んでおり、半導体チップの土台となるシリ コンウエハーの安定供給を目指す。2024 年に設立された同社は、26 年に中部クアンチ省で高純度石英(H PQ)を製造する工場を稼働させ、研究開発(R&D)拠点で技術と人材を蓄積。産業全体を育てる第一 歩を踏み出そうとしている。

半導体チップは基板となるシリコンウエハーを切り 出して生産される。そのシリコンウエハーの原料となる のが石英だ。石英を高純度化して金属シリコンを取り出 し、鋳造してできるインゴット(塊)を薄くスライスし た円盤状の板がシリコンウエハーだ。 半導体製造の前工程に位置づけられるウエハーの生 産は信越化学工業とSUMCOの日本勢が強く、ベトナム企業での存在感はほぼ皆無。ベトナムウエハーのチャ ウ・ホアン・ロン最高経営責任者(CEO)は参入の糸 口として前工程でも上流に着目。22 年にHPQを製造す る構想を立ち上げ、24 年に同社を設立した。 ロン氏はNNAに「ウエハーに回路を形成する前工程 は桁違いに資金がかかる。だからこそ、われわれのよう な新興企業が半導体のバリューチェーンに食い込むに は、その上流の高純度石英から始めるしかない」と話す。
26 年に工場稼働目指す
ロン氏がまず始めたのが、石英でも半導体用途に適し ている、大型で純度の高い結晶が風化して堆積したクオ ーツサンド(石英砂)の発掘だ。「半導体用に適した石 英は地質の理解なしには見つけられない。年代や地層の 成り立ちを読み解き、現場を歩いて掘り当てる必要があ る。われわれはそこから始めた」と話す。

同社は北中部クアンチ省で適した鉱床を見つけ、26 年 稼働予定のHPQ精製工場建設へとこぎつけた。精製工場では、クオーツサンドから鉄やアルミなどの不純物を 徹底的に取り除き、半導体に使えるレベルまで磨き上げ る。工場の第1期の投資額は約 300 万米ドル(約4億 5,000 万円)。生産能力は年 1,500 トンだ。
精製したHPQからインゴットへの鋳造、ウエハー加 工といった工程は生産委託するが、原料規格と品質保証 は自社で管理する。ロン氏は「生産は委託しても品質保 証は自分たちが握る。そこを渡したら顧客の信頼は得ら れない」と強調する。
さらに「上流を押さえなければコストは制御できな い。自分たちで石英を確保し精製することで、下流の工 程に安定性と競争力を与えることができる」とも述べ、 資源とコストコントロールの重要性を説いた。 ベトナムウエハーの挑戦は国の産業政策にも後押し されている。ベトナム政府は半導体を重点分野に据え、 税制優遇や研究開発補助、人材育成支援を通じてHPQ 工場の整備を支えている。ベトナムウエハーは、国家戦 略と歩調を合わせることで、事業基盤の安定化を図る。
<会社概要>
ベトナムウエハー:
「豊富な石英資源を半導体水準の素材へ転換する」と いう着想を得た創業メンバーが中心となって 22 年に 事業化に向けたチームを立ち上げ、24 年に法人化し た。CEOのロン氏はベトナムウエハーの設立前、イ ンドチャイナ・ホールディングスやディスカバリー・ グループなどベトナムの有力投資銀行で経営幹部と して勤務した。専門は、戦略計画や財務管理、合併・ 買収(M&A)。

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